あなたの脳と体で毎晩起きていること。科学が明かす「睡眠の4つのステージ」の基本

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睡眠は、ただ目を閉じて休んでいるだけの時間ではない

毎日何気なくとっている睡眠ですが、ただ目を閉じて休んでいるだけの時間ではありません。
眠っているあいだ、脳と体の中では、起きている時間にはできない大事な作業が進んでいます。

その仕組みを理解するうえで、まず知っておきたいのが、睡眠には段階があるということです。一般的な健康な睡眠では、通常はまずノンレム睡眠から始まり、そのあとにレム睡眠が続きます。米国国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)は、最初のレム睡眠は通常、眠りについてから約90分後に起こると説明しています。米国国立心肺血液研究所(NHLBI)も、睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠をくり返し、その周期はおよそ80〜100分ごとに始まると説明しています。

つまり、睡眠はひと続きの同じ状態ではなく、まずノンレム睡眠から始まり、そのあとにレム睡眠へ移る流れを何度もくり返しているのです。

現在の一般的な分類では、睡眠は

  • ノンレム睡眠 ステージN1
  • ノンレム睡眠 ステージN2
  • ノンレム睡眠 ステージN3
  • レム睡眠

の4つの段階で考えられます。N1からN3まではノンレム睡眠で、最後がレム睡眠です。睡眠の前半では深いノンレム睡眠が多く、朝方に近づくにつれてレム睡眠の割合が長くなるのが一般的です。

ここからは、その4つのステージで何が起きているのかを順番に見ていきます。

ノンレム睡眠 ステージ1(N1):覚醒と睡眠の境目

最初に訪れるのが、ノンレム睡眠の第1段階であるステージN1です。
これは、起きている状態から眠りへ入る入口のような段階です。

この段階では、まだ眠りはかなり浅く、少しの物音でも起きやすい状態です。ハーバード大学の健康情報メディア「Harvard Health Publishing(ハーバード・ヘルス・パブリッシング)」でも、N1は起きている状態と眠っている状態の間にある浅い眠りだと説明されています。

「もう眠りそうなのに、まだ周りの気配はわかる」
そんな感覚に近いのが、このステージです。

ノンレム睡眠 ステージ2(N2):眠りの中心になる時間

次に入るのがステージN2です。
浅い眠り(ステージ1)から深い眠り(ステージ3)へと移行する中間の段階であり、「すやすや」と眠っている状態を指します。

実は、私たちが一晩眠る中で最も長い時間を過ごすのがこのステージ2であり、睡眠全体の約50〜60%を占めています。米国国立心肺血液研究所(NHLBI)は、この段階で心拍数や体温が下がると説明しています。

ここでよく出てくるのが、「睡眠紡錘波(すいみんぼうすいは)」です。
少し難しい言葉ですが、これは睡眠中に現れる特徴的な脳波のことです。1秒間に10〜15回ほど細かく振動する、非常に速くリズミカルな脳波で、脳の中心部にある「視床」から「大脳皮質」へ向かって送られます。

睡眠研究では、この睡眠紡錘波が記憶の定着に関わる可能性が示されています。つまりN2は、ただ眠っているだけではなく、日中に得た情報を整理し始める時間でもあるのです。

ノンレム睡眠 ステージ3(N3):最も深い眠り

ノンレム睡眠の中で最も深いのが、ステージN3です。
いわゆる「ぐっすり眠っている状態」で、起こされてもすぐには反応しにくい段階です。米国国立心肺血液研究所(NHLBI)は、この段階を「最も深い眠り」と説明しています。この状態のときに脳波を測定すると、「デルタ波」と呼ばれる1秒間に1〜4回程度のゆっくりとした大きな波が現れるため、徐波睡眠(じょはすいみん)と呼ばれています。

この深い眠りが大事なのは、体の回復が進みやすいからです。米国国立心肺血液研究所(NHLBI)は、深い睡眠では成長ホルモンの分泌が進み、筋肉や細胞、組織の修復を助けると説明しています。

つまりN3は、日中に使った体を立て直す時間だと考えるとわかりやすいです。

さらに、深い眠りは脳のメンテナンスとも関係しています。睡眠中には、脳の老廃物を外へ流しやすくする仕組みが働きやすくなることが研究で示されています。

レム睡眠:記憶を整理し、創造性を高める時間

深いノンレム睡眠がしばらく続いた後、眠りは徐々に浅くなり、いよいよレム睡眠へと移行します。

レム睡眠は、閉じているまぶたの下で眼球が素早く動くことが特徴の眠りです。レム(REM)とは「Rapid Eye Movement(急速眼球運動)」の略で、閉じているまぶたの下で眼球が素早く動くことが特徴の眠りです。この特徴から名づけられました。米国国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)は、レム睡眠では目がすばやく動き、脳活動は活発で、夢を見やすい一方、体の筋肉はかなり力の抜けた状態になると説明しています。

つまり、体は休んでいるのに、脳はかなり活発に働いているのがレム睡眠です。私たちが鮮明でストーリー性のある夢を見やすいのも、この時間帯です。

レム睡眠には、記憶の整理や定着に関わる役割があると考えられています。日中に見聞きした情報や学んだ内容は、脳の中で整理され、必要なものが長く残る記憶としてつながりやすくなります。ハーバード・ヘルス・パブリッシングも、睡眠の各段階が記憶や学習に関わると説明しています。

さらに、レム睡眠は創造性とも関係すると考えられています。研究では、睡眠、とくにレム睡眠のあとに創造的な問題解決が進みやすい可能性が示されています。つまりレム睡眠は、ただ夢を見る時間ではなく、情報をつなぎ直し、新しい発想を生みやすくする時間でもあるのです。

睡眠周期:一晩の流れは均等ではない

私たちは一晩のうちに、この「ノンレム睡眠→レム睡眠」という流れを何度もくり返しながら朝を迎えます。周期の長さは毎回同じではなく、一般には90〜120分ほどの幅があると考えられています。最初の周期はそれより少し短いこともあり、ハーバード大学睡眠医学部門は最初の周期を70〜100分、2回目以降を90〜120分ほどと説明しています。

ここで大事なのは、すべての周期が同じ中身ではないということです。
夜の前半では深いノンレム睡眠が多く、朝方に近づくにつれてレム睡眠の割合が長くなります。つまり、睡眠の前半は体の回復に関わる時間が多く、後半は記憶や感情の整理に関わる時間が増えていくのです。

そのため、睡眠時間を極端に削ると、朝方に多く現れるレム睡眠まで削ることになり、記憶の整理や感情の調整に影響しやすくなります。一方で、眠り始めの最初の周期では深いノンレム睡眠が出やすいため、この時間帯をしっかり眠れるかどうかも、翌日の体の回復に関わりやすくなります。

まとめ:4つのステージの流れが、睡眠の質をつくる

睡眠は、ただ長く眠ればよいというものではありません。
実際には、N1、N2、N3、レム睡眠という4つのステージを行き来しながら進んでいます。

  • N1は、眠りに入る入口
  • N2は、眠りの中心になる段階
  • N3は、体の回復を支える深い眠り
  • レム睡眠は、脳が活発に働き、記憶や感情の整理に関わる眠り

この流れが整うことで、私たちの睡眠は質の高いものになりやすくなります。特に、睡眠の前半に出やすい深いノンレム睡眠と、後半に長くなりやすいレム睡眠の両方が大切です。

朝のだるさや日中の眠気が続いているなら、睡眠時間だけでなく、眠りがどのような段階をたどっているのかにも目を向ける価値があります。

そして、4つの睡眠ステージは、一晩の中で決まった順に一度だけ現れるわけではありません。
ノンレム睡眠とレム睡眠を行き来しながら、周期的にくり返されています。

この睡眠周期は「90分」と説明されることが多い一方で、実際には個人差があり、「90分の倍数で起きればよい」と単純に考えるのは正確ではありません。

睡眠周期の考え方と、眠り始めの最初の周期がなぜ大切なのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。

「90分周期の罠」と最初の睡眠周期。睡眠の質を左右する科学的な考え方

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