日本人の平均睡眠時間7時間22分の真実

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平均の数字では見えない、働き盛り世代の睡眠不足

「日本人の平均睡眠時間は7時間22分」と聞くと、「そこまで悪くないのではないか」と思うかもしれません。

一方で、自分の生活を思い返すと、

朝はだるい。

通勤中は眠い。

午後は集中が切れる。

「本当にみんなそんなに寝ているのだろうか?」と感じる人もいるはずです。

その感覚は自然です。

なぜなら、「平均睡眠時間7時間22分」という数値だけでは、働き盛り世代の実態が見えにくいからです。

この「7時間22分」というのは、OECD(経済協力開発機構)の時間利用データに基づく比較で、広く引用されている日本の平均睡眠時間です。

実際、当時の文部省(現在の文部科学省)の支援を受けて1988年に始まった、日本人を対象にした全国規模の共同追跡調査では、7時間前後の睡眠で死亡リスクが最も低い傾向が示されています。この調査は、「がんのリスクを調べるための日本の共同追跡調査」で、略して JACC Study と呼ばれています。

ただし、ここに落とし穴があります。これは全年齢をまとめた平均です。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、40〜59歳で睡眠時間が6時間未満の人は49.5%とされています。つまり、この年代では、ほぼ2人に1人が6時間も眠れていません。朝はだるい。通勤中は眠い。午後には集中が切れる。それでも仕事は待ってくれません。会議、資料作成、部下や取引先への対応をこなし、家に帰ってから夕食や入浴を済ませる。そうしているうちに、睡眠に使える時間は短くなっていきます。

平均では7時間を超えていても、40〜59歳にしぼると、6時間未満の睡眠で生活している人は約半数います。だから、「みんな本当にそんなに寝ているのだろうか?」という感覚は、決して不自然ではありません。

平均の数値だけでは、働き盛り世代の実態は見えにくい

OECDの時間利用データに基づく比較では、日本の平均睡眠時間は7時間22分でした。OECD平均の8時間28分より約1時間短く、比較対象となった33か国の中で最短でした。最も長かったのは南アフリカの9時間13分で、米国は8時間51分、英国は8時間28分、韓国は7時間51分でした。こうして並べると、日本の7時間22分がかなり短いことがわかります。

つまり、「日本人の平均は7時間22分」と聞くと普通に見えても、国際的に見るとかなり短いのです。しかも、その平均の裏で、働き盛り世代の多くがさらに短い睡眠で毎日を回しています。平均は安心材料ではなく、むしろ実態を見えにくくしている数値かもしれません。

6時間未満が続くと、何が起こりやすいのか

ここで使われることがあるのが「睡眠負債」という言葉です。これは、足りない睡眠が毎日少しずつ積み重なっている状態、と考えるとわかりやすいです。借金のように、あとから重くのしかかるイメージです。米国疾病予防対策センター(CDC)は、18〜60歳では少なくとも7時間の睡眠をすすめています。逆に言えば、6時間未満が続く生活は、十分な睡眠からかなり離れている可能性があります。

1.死亡リスクや病気のリスクが上がりやすくなる

「がんのリスクを調べるための日本の共同追跡調査(JACC Study)」 では、7時間前後の睡眠で死亡リスクが最も低く、4時間以下ではリスクが高かったことが報告されています。さらに、10時間以上の長い睡眠でも、脳卒中や心血管疾患を含む死亡リスクが高い傾向が示されており、短すぎても長すぎてもリスクが上がる、いわゆるU字型の関係が見られました。

また、厚生労働省の睡眠ガイドでは、睡眠不足は肥満、糖尿病、心血管疾患、脳血管障害、うつ病などと関係すると整理されています。つまり、睡眠不足は「午後に眠い」で終わる話ではなく、将来の病気の土台にもなりうる、ということです。

2.脳の「ゴミ」がたまりやすくなる可能性がある

睡眠には、脳の中を片づける働きがあると考えられています。アメリカのロチェスター大学は、睡眠中に脳の老廃物を外へ流しやすくする仕組みを報告しています。少し難しい話ですが、たとえるなら「脳の排水システム」のようなものです。

ここでよく出てくるのがアミロイドβです。これは、たとえるなら「脳の中に少しずつ溜まる細かいゴミ」のようなものです。少しあるだけですぐ病気になるわけではありませんが、うまく片づかない状態が長く続くのは、脳にとって望ましくないと考えられています。つまり、睡眠不足が長く続くことは、脳にとって望ましい状態ではないと考えられています。

3.食べすぎや内臓脂肪の増加につながりやすい

2022年に米国のメイヨークリニック研究チームが発表した実験では、健康な若い成人12人を対象に、14日間の睡眠制限を行ったところ、1日の摂取カロリーが平均で約308kcal増え、内臓脂肪も増加しました。内臓脂肪は約11%増えており、睡眠不足が「眠い」だけでなく、食べすぎや腹まわりの脂肪の増加にもつながりやすい可能性が示されています。

健康診断で体重、腹囲、中性脂肪、血糖値が気になり始めた人にとって、これは他人事ではありません。睡眠不足が重なると、食事や運動だけでは生活習慣病のリスク管理が難しくなることがあります。

「週末に寝だめすれば大丈夫」は危うい

平日は短く、休日に長く寝る。これは多くの人がやっていることです。

ただ、厚生労働省の睡眠ガイドでは、休日の寝だめでは平日の日中の眠気は完全には解消しないとされています。さらに、米国国立衛生研究所(NIH)の公式記事でも、週末に長く寝るだけでは、平日の睡眠不足で起きた代謝の乱れを十分に打ち消せなかったことが示されています。

最初に見直したいのは「眠り始めの質」

仕事が忙しくて、いきなり睡眠時間を大きく増やせない。そういう人も多いと思います。

その場合、まず意識したいのが眠り始めの質です。睡眠には浅い眠りと深い眠りがありますが、眠ってから最初の時間帯には深い眠りが出やすくなります。厚生労働省の睡眠ガイドでも、まず十分な睡眠時間を確保しつつ、睡眠習慣を整えることの重要性が示されています。

そのために、すぐできることは比較的はっきりしています。

朝起きたら光を浴びる。

就寝前の入浴タイミングを整える。

平日と休日の起床時刻を大きくずらしすぎない。

こうした基本的な習慣は、睡眠の質を整えるうえで大切です。

まとめ:平均の数字だけでは、働き盛り世代の実態は見えにくい

「日本人の平均睡眠時間7時間22分」という数値だけでは、働き盛り世代の睡眠不足の実態は見えてきません。

実際には、仕事や家庭で責任が重なりやすい時期に、6時間未満の睡眠で生活している人も少なくありません。朝のだるさ、日中の眠気、集中力の低下を抱えたまま、仕事と家庭の両方を回している人が多くいます。

しかも、睡眠不足の影響は「昼間に眠い」で終わりません。死亡リスクや生活習慣病のリスク上昇との関連、脳の老廃物がたまりやすくなる可能性、食べすぎや内臓脂肪の増加につながりやすい可能性など、体の内側では見えにくい変化が少しずつ積み重なっていきます。

さらに、「週末に寝だめすれば大丈夫」と考えがちですが、それだけで平日の不足を打ち消せるとは限りません。だからこそ大切なのは、平均値を見て安心することではなく、今の自分の睡眠が本当に足りているのかを見直すことです。

では、自分にとって本当に足りている睡眠時間は、どう考えればよいのでしょうか。
「7時間が正解なのか」「8時間必要なのか」という疑問については、睡眠科学と遺伝的な個人差の両面から、自分に合った睡眠時間の考え方をこちらで整理しています。

7時間?8時間?科学と遺伝子が導き出した「最適な睡眠時間」の結論

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