休日に長く眠るのは、平日の睡眠不足のサイン
平日は仕事や家のことに追われて、睡眠時間が短くなる。
そのぶん、週末はアラームをかけずに長く眠る。
こうした生活をしている人は少なくないと思います。土曜日の朝、いつもより遅くまで眠れると、少し楽になった感じがします。頭が軽くなり、疲れが抜けたように感じることもあります。
休日に長く眠ること自体が、すべて悪いわけではありません。
平日に睡眠が足りていなければ、体が長く眠ろうとするのは自然な反応です。実際、休日に長く眠ることで、眠気や疲労感が一時的に軽くなることはあります。
ただし、ここで考えたいのは、その寝だめで平日の睡眠不足をどこまで取り戻せるのか、ということです。
睡眠負債とは、睡眠不足が積み重なった状態
睡眠負債とは、必要な睡眠時間に対して、実際の睡眠時間が足りない状態が続くことです。
たとえば、本来は7時間半眠ると調子がいい人が、平日に毎日6時間しか眠れていないとします。この場合、1日あたり1時間半の睡眠不足が出ます。それが5日続けば、単純計算では7時間半の不足になります。
もちろん、人間の体はお金の借金のように単純に計算できるわけではありません。
ただ、睡眠不足が1日だけで終わらず、何日も続くと、日中の眠気、集中力の低下、食欲の乱れ、血糖や自律神経の変化など、体のあちこちに影響が出やすくなります。
米国疾病予防対策センター(CDC)は、18〜60歳の成人に対して、1日7時間以上の睡眠をすすめています。もちろん、必要な睡眠時間には個人差があります。6時間台で調子がいい人もいれば、8時間以上必要な人もいます。
大切なのは、数字だけではありません。
朝起きても疲れが残る。日中に強い眠気がある。休日になると平日より何時間も長く眠ってしまう。こうした状態が続いているなら、平日の睡眠時間が足りていない可能性があります。
休日の寝だめは、気合いが足りないから起きられないのではなく、平日の睡眠不足が表に出ているサインとして見る方が自然です。
休日に長く眠ると、少し回復することはある
休日の寝だめは意味がないのか。
そう言い切るのも、少し違います。
睡眠不足のあとに長く眠ると、眠気が軽くなったり、頭が少しはっきりしたりすることがあります。短い睡眠が続いたあとに、体が回復のために長く眠ろうとするのは自然です。
実際、睡眠不足のあとに回復睡眠をとることで、体の働きが一部戻ることは研究でも報告されています。
たとえば、1994年、米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のマイケル・アーウィン氏らは、健康な成人を対象に、睡眠時間を短くしたときにナチュラルキラー細胞の働きがどう変わるかを調べました。
この研究では、睡眠時間を短くしたあとにナチュラルキラー細胞の働きが低下し、その後の回復睡眠で元に戻ったことが報告されています。
つまり、睡眠不足のあとに長く眠ることには、一定の回復の意味があります。
問題は、それを毎週のように繰り返してよいのか、ということです。
休日の寝だめを毎週くり返すと、睡眠リズムが乱れやすい
平日は睡眠時間が短く、休日は昼近くまで長く眠る。
この生活が毎週続くと、睡眠時間だけでなく、眠る時刻と起きる時刻も大きくずれます。
体内時計は、毎日の起床時刻、朝の光、食事、活動のタイミングに合わせて動いています。休日に起きる時刻が大きく遅れると、体内時計も後ろにずれやすくなります。
その結果、日曜日の夜に眠気が来にくくなることがあります。寝る時間が遅くなれば、月曜日の朝はさらに起きづらくなります。
週末に長く眠ったはずなのに、週明けにまた眠い。
この状態は、睡眠時間だけの問題ではありません。平日と休日で、眠る時刻と起きる時刻が大きくずれていることも関係しています。
このように、平日と休日で睡眠のタイミングが大きくずれる状態は、ソーシャル・ジェットラグと呼ばれます。日本語では、社会的時差ボケと説明されることがあります。
つまり、週末の寝だめを毎週くり返すと、平日の睡眠不足を補うだけでなく、次の週の眠り始めを乱す原因にもなります。
休日の寝だめが体内時計をずらすことがある
休日の寝だめには、もう一つ問題があります。
それは、体内時計がずれやすくなることです。
平日は朝6時に起きている人が、休日に10時や11時まで眠る。すると、睡眠時間は増えますが、起きる時刻が大きくずれます。
体内時計は、朝の光、食事、活動、睡眠のタイミングに合わせて調整されています。起きる時刻が大きく遅れると、朝の光を浴びる時間も遅れます。すると、夜に眠くなるタイミングも後ろにずれやすくなります。
このように、平日と休日で睡眠のタイミングが大きくずれる状態は、ソーシャル・ジェットラグと呼ばれます。日本語では、社会的時差ボケと説明されることがあります。
海外旅行をしていなくても、週末ごとに体内時計がずれることで、時差ボケに近い状態が起こるという考え方です。
日曜日の夜に眠れない。月曜日の朝がつらい。週の前半に調子が出ない。
こうした状態があるなら、週末の寝だめが体内時計を後ろにずらしている可能性があります。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、休日の寝だめでは平日の日中の眠気を完全には解消できず、メリットは限定的だと整理されています。また、休日の寝だめによる社会的時差ボケにも注意が必要とされています。
睡眠負債を減らすには、平日の不足を小さくする
休日に長く眠ることだけで、平日の睡眠不足を毎回きれいに取り戻すのは難しい。
だから、考える順番は「休日に何時間寝るか」ではなく、「平日の睡眠不足をどれだけ小さくできるか」です。
たとえば、平日に毎日1時間ずつ睡眠が足りていないなら、5日でかなり大きな不足になります。それを土日だけでまとめて取り戻そうとすると、起床時刻も大きくずれやすくなります。
現実的には、まず平日の睡眠を15分でも30分でも増やす方が続けやすいでしょう。
15分だけでも、平日5日で75分です。30分なら150分です。週末にまとめて長く眠るより、平日の不足を少しずつ減らす方が、睡眠リズムを大きく崩さずに済みます。
休日に眠気が強い場合は、昼近くまで寝続けるより、いったん朝に起きて、午後の早い時間に短い昼寝を入れる方が使いやすいです。昼寝は15〜20分程度にしておくと、夜の睡眠に影響しにくくなります。
睡眠負債を減らす方法は、特別なものではありません。
休日にまとめて処理するのではなく、平日の不足を少しずつ小さくする。この考え方に変えるだけでも、寝だめに頼る生活から抜け出しやすくなります。
まとめ:休日の寝だめより、平日の睡眠不足を小さくする
休日に長く眠ることには、一定の意味があります。
睡眠不足のあとに回復睡眠をとることで、体の働きが一部戻ることは研究でも報告されています。だから、休日の寝だめをすべて悪いものと考える必要はありません。
ただし、休日に長く眠れば、平日の睡眠不足をすべて取り戻せるわけではありません。
平日は睡眠時間が短く、休日は昼近くまで眠る。この生活を毎週くり返すと、睡眠時間だけでなく、眠る時刻と起きる時刻も大きくずれます。その結果、日曜日の夜に眠気が来にくくなり、月曜日の朝がつらくなることがあります。
このように、平日と休日で睡眠のタイミングが大きくずれる状態は、ソーシャル・ジェットラグと呼ばれます。日本語では、社会的時差ボケと説明されることがあります。
睡眠負債を減らすために大切なのは、休日にまとめて長く眠ることではありません。まず考えたいのは、平日の睡眠不足をどれだけ小さくできるかです。
平日の睡眠を15分でも30分でも増やす。休日の起床時刻を大きくずらしすぎない。眠気が強い場合は、昼近くまで寝続けるのではなく、短い昼寝を使う。
地味な方法ですが、睡眠不足を毎週くり返さないためには、この方が現実的です。
休日の寝だめに頼る生活から、平日の睡眠不足を少しずつ減らす生活へ。
睡眠負債を減らすには、その考え方の切り替えが必要です。
ただ、平日の睡眠不足を小さくしたくても、仕事や通勤時間をすぐに変えられるとは限りません。
そこで多くの人が考えるのが、朝の通勤電車で少し眠ることです。
では、電車の中で眠ることは、睡眠不足の足しになるのでしょうか。
通勤中の仮眠の効果と限界については、こちらの記事で詳しく見ていきます。
→ 電車で寝るのは睡眠不足の足しになるのか?通勤中の仮眠の効果と限界
参考URL
・厚生労働省:健康づくりのための睡眠ガイド2023
Sleep Guide for Health Promotion 2023
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf
・米国疾病予防対策センター(CDC):成人に推奨される睡眠時間
About Sleep
https://www.cdc.gov/sleep/about/index.html
・学術誌『Psychosomatic Medicine』:部分的な睡眠不足によるナチュラルキラー細胞活性の低下と回復睡眠後の変化を調べた研究
Partial sleep deprivation reduces natural killer cell activity in humans
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7871104/
