睡眠不足は老化と関係する?細胞レベルで見た睡眠と体の変化

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睡眠不足は、体内の老化とも関係する

「最近、疲れが顔に出やすくなった」
「肌のハリが落ちてきた気がする」
「前より回復に時間がかかる」

こうした変化を感じると、多くの人は年齢のせいだと考えます。

ただ、老化の進み方は年齢だけで決まるわけではありません。

同じ年齢でも、疲れやすい人もいれば、元気に動ける人もいます。肌や体型に差が出ることもあります。

睡眠も、その一つです。

私たちの体は、起きている間にエネルギーを使い、細胞にも負担がかかります。眠っている間には、その負担を整え、修復し、翌日に備える働きが進みます。

睡眠不足が続くと、この回復の時間が足りなくなります。

睡眠不足は、細胞の修復、炎症反応、炎症反応、酸化ストレスなど、体内の老化に関わる仕組みとも関係しています。

老化を考えるとき、肌や体力だけを見るのではなく、体内で細胞に何が起きているのかを見ることも大切です。

老化は、細胞の回復力が落ちていくことでもある

私たちの体は、皮膚、筋肉、血管、内臓など、たくさんの細胞でできています。

皮膚の細胞は、外からの刺激から体を守る。
筋肉の細胞は、体を動かす。
血管の細胞は、血液が流れる通り道を保つ。
内臓の細胞は、消化、代謝など、それぞれの臓器の働きを支える。

このように、細胞は場所によって役割が違います。

そして、それぞれの細胞は、働きながら少しずつ傷んだり、古くなったりします。

本来なら、傷んだ部分は修復され、古くなった細胞は新しい細胞に入れ替わります。

しかし年齢を重ねると、この修復や入れ替わりが若いころほどスムーズに進まなくなります。

その結果、傷んだ部分が残り、肌の回復、筋肉の疲労回復、血管や内臓の働きにも影響が出ます。

睡眠不足が続くと、眠っている間に進むはずの修復が十分に行われなくなります。その状態が続けば、細胞の回復が追いつかず、老化が進みやすくなります。

テロメアは、老化を考えるうえで重要な目印の一つ

ここで一つの目印になるのが、テロメアです。

テロメアを理解するには、まず細胞の入れ替わりから考えるとわかりやすくなります。

体の中では、古くなった細胞や傷んだ細胞が少しずつ役目を終えます。役目を終えた細胞は、分解されたり、体の外へ出されたり、免疫細胞に片づけられたりします。

その一方で、別の細胞が分裂して、新しい細胞を作ります。

細胞分裂とは、一つの細胞が分かれて、新しい細胞を作ることです。

こうして、古い細胞と新しい細胞が少しずつ入れ替わり、皮膚、血液、内臓など、体のさまざまな部分が保たれています。

この細胞分裂と関係しているのが、テロメアです。

私たちの細胞の中には「核」があります。核の中には、染色体があります。

染色体には、体の細胞を作ったり働かせたりするための大切な情報が入っています。

テロメアは、この染色体の先端部分にあります。

染色体の端がむき出しになると、細胞はそこを傷ついた場所のように扱ってしまうことがあります。すると、余計な修復が起きて、染色体の情報が乱れる原因になります。

それを防ぐために、テロメアが染色体の端を保護しています。

イメージとしては、靴ひもの先についているキャップに近いものです。

靴ひもの先にキャップがあると、ひもがほつれにくくなります。同じように、テロメアは染色体の端を守っています。

ただし、テロメアはずっと同じ長さではありません。

細胞が分裂するたびに、テロメアは少しずつ短くなります。

テロメアが短くなること自体は、自然な変化です。

問題は、短くなりすぎたときです。

テロメアが短くなりすぎると、細胞はそれ以上分裂しにくくなります。

新しい細胞を作りにくくなるため、古くなった細胞との入れ替わりも進まなくなります。

その結果、古くなった細胞や傷んだ細胞が残り、細胞本来の働きが落ちていきます。

皮膚なら、肌の回復が遅くなる。
筋肉なら、疲労や傷んだ部分の修復に時間がかかる。
血管や内臓なら、それぞれの働きにも影響が出る。

このように、細胞の老化は、体全体の老化につながっていきます。

睡眠の問題とテロメアの関係を調べた研究

睡眠の問題とテロメアの長さには、関連が報告されています。

2023年には、オーストラリアのボンド大学などのデイビッド・サボット氏らが、睡眠とテロメアの長さに関する研究を整理したレビューを発表しました。

このレビューでは、短い睡眠時間、不眠、睡眠時無呼吸などが、短いテロメアと関連していることがまとめられています。

ただし、睡眠の質そのものとテロメアの長さの関係については、まだ研究が十分ではないことも指摘されています。

個別の研究では、2012年にユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のマグダレーナ・ジャコウスカ氏、アンドリュー・ステップトー氏らが、中年から高齢の健康な男女を対象に、睡眠時間と白血球のテロメアの長さとの関係を調べています。

白血球は、血液の中にある免疫に関わる細胞です。

この研究では、参加者の睡眠時間を自己申告で確認し、血液中の白血球にあるテロメアの長さを測定しました。

その結果、睡眠時間の短さと白血球のテロメアの短さとの関連が、男性で報告されました。

一方で、女性では同じ関連は確認されていません。

このように、睡眠とテロメアの関係は、研究によって結果の出方に違いがあります。

それでも、短い睡眠時間や不眠などが、短いテロメアと関連することは複数の研究で報告されています。

睡眠不足は、炎症や酸化ストレスとも関係する

細胞は、毎日の活動の中で少しずつ負担を受けています。

その負担に関わるものとして、炎症反応や酸化ストレスがあります。

以前の記事で見たように、睡眠不足は炎症反応とも関係しています。

炎症反応は、本来、体を守るための働きです。感染やケガがあるときには、外敵を処理し、傷ついた場所の修復を始めます。

しかし、炎症反応が長く続くと、細胞は常に刺激を受けた状態になります。

その状態が続けば、傷んだ部分の修復が遅れ、古くなった細胞の入れ替わりも乱れます。

その結果、古い細胞や傷んだ細胞が残り、皮膚、筋肉、血管、内臓などの働きにも影響が出ます。

酸化ストレスも、細胞に負担をかける要因です。

酸化ストレスとは、体の中で生じる活性酸素などによって、細胞が傷つきやすくなる状態です。

活性酸素は、体の中で自然に生じるものです。完全に悪いものではありません。

問題は、増えすぎたり、処理が追いつかなくなったりすることです。

酸化ストレスが強くなると、細胞の膜、タンパク質、染色体などに負担がかかります。

細胞が傷つき、修復が追いつかない状態が続けば、細胞本来の働きは落ちていきます。

炎症反応が長引く。
酸化ストレスによって細胞が傷つく。
修復や入れ替わりが乱れる。

こうした流れが重なると、体の内側では老化が進みやすくなります。

皮膚も細胞でできています。細胞の修復や入れ替わりが乱れれば、肌の回復、乾燥、疲れた表情にも表れます。

睡眠不足による老化は、見た目だけの話ではありません。体内で起きている細胞の変化が、外側にも出てくるのです。

まとめ:睡眠不足は、細胞の老化とも関係している

老化は、見た目に出る変化だけではありません。

体内では、古くなった細胞や傷んだ細胞が処理され、新しい細胞が作られています。この入れ替わりがうまく進むことで、皮膚、血液、内臓などの働きは保たれています。

この細胞の入れ替わりと関係するのが、テロメアです。

テロメアは、細胞が分裂するたびに少しずつ短くなります。短くなりすぎると、細胞は分裂しにくくなります。

新しい細胞が作られにくくなるため、古くなった細胞との入れ替わりも進みにくくなります。

睡眠の問題とテロメアの長さについては、複数の研究で関連が報告されています。短い睡眠時間、不眠、睡眠時無呼吸などが、短いテロメアと関連することを整理したレビューもあります。

また、睡眠不足は炎症反応や酸化ストレスとも関係します。

炎症反応が長引けば、細胞は刺激を受け続けます。酸化ストレスが強くなれば、細胞の膜、タンパク質、染色体などにも負担がかかります。

こうした状態が重なると、細胞の修復や入れ替わりは乱れ、体内の老化につながっていきます。

さらに、睡眠不足は免疫の働きとも関係します。

体の中では、異常な変化を起こした細胞や、ウイルスに感染した細胞を見つけて処理する免疫細胞が働いています。その一つが、ナチュラルキラー細胞です。

睡眠不足とがんリスクの関係、そしてナチュラルキラー細胞と免疫の働きについては、こちらの記事で詳しく見ていきます。

→ 睡眠不足はがんリスクと関係する?ナチュラルキラー細胞と免疫の働き

参考URL

  • 学術誌『Brain, Behavior, & Immunity – Health』:オーストラリアのボンド大学などのデイビッド・サボット氏らによる、睡眠とテロメアの長さに関する研究を整理した研究
    The association between sleep quality and telomere length: A systematic literature review
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9860369/
  • 学術誌『PLOS ONE』:ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のマグダレーナ・ジャコウスカ氏、アンドリュー・ステップトー氏らによる、睡眠時間と白血球のテロメアの長さとの関係を調べた研究
    Short Sleep Duration Is Associated with Shorter Telomere Length in Healthy Men: Findings from the Whitehall II Cohort Study
    https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0047292
  • 学術誌『PLOS ONE』:女性を対象に、交代勤務、睡眠時間、白血球のテロメアの長さとの関係を調べた研究
    Associations between Rotating Night Shifts, Sleep Duration, and Telomere Length in Women
    https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0023462
  • 学術誌『Sleep』:睡眠時間・睡眠の質と、老化に関わる指標との関係を調べた研究
    Sleep Duration, Sleep Quality, and Biomarkers of Aging in the Nurses’ Health Study
    https://academic.oup.com/sleep/article/37/1/65/2454015
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