寝る前に本を読むと眠りやすい?読書と睡眠の関係

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寝る前に本を読むと眠りやすくなる?

寝る前に本を読むのが習慣になっている人もいると思います。

本を読んでいるうちに眠くなり、そのまま寝る。

なんとなく睡眠には良さそうですが、実際のところ、寝る前の読書によって眠りやすくなるのでしょうか。

現在の研究では、寝る前に本を読んだ人のほうが、『睡眠が良くなった』と答えた割合が高かったという結果が報告されています。

ただし、「本を読めば睡眠時間が長くなる」「眠りが深くなる」といったことまで、十分に分かっているわけではありません。

脳波や睡眠時間を詳しく測った研究はまだ限られていますが、寝る前に本を読んだ人と読まなかった人を比べた研究はあります。

次に、その研究を詳しく見ていきます。

991人を「寝る前に本を読む人」と「読まない人」に分けた研究

2021年、アイルランドの国立アイルランド大学ゴールウェイ校の看護・助産学部や、臨床試験の研究方法を支援するヘルス・リサーチ・ボード臨床試験方法論研究ネットワーク(Health Research Board–Trials Methodology Research Network:HRB-TMRN)などの研究者たちが、寝る前の読書と睡眠について研究しました。

研究の中心となったエレイン・フィニュカン(Elaine Finucane)氏は、同大学の看護・助産学部に加え、HRB-TMRNや、研究結果をまとめて医療に活用するエビデンス・シンセシス・アイルランド(Evidence Synthesis Ireland)にも所属する研究者です。

この研究には英国のアバディーン大学やオックスフォード大学などの研究者も参加しています。

対象となったのは、18歳以上の一般成人991人です。

参加者は無作為に、

  1. 寝る前に本を読むグループ 496人
  2. 寝る前に本を読まないグループ 495人

の2つに分けられました。

このように、参加者を無作為に複数のグループに分けて結果を比較する研究を、ランダム化比較試験といいます。

本を読むグループには、自宅の寝床に入ったあと、眠る前に15〜30分ほど本を読むよう指示しました。

もう一方のグループは、寝床に入ったあと本を読まずに過ごしました。

これを7日間続けてもらい、研究期間が終わったあとに、睡眠が良くなったと感じたかどうかなどを回答してもらいました。

その結果、「睡眠が改善した」と回答した割合は、

・寝る前に本を読むグループでは約42%(369人中156人)
・寝る前に本を読まないグループでは約28%(405人中112人)

でした。

寝る前に本を読むグループは、読まないグループに比べて、「睡眠が改善した」と回答した人の割合が約1.5倍でした。

「本を読めば眠りが深くなる」と分かったわけではない

この研究には注意点もあります。

まず、脳波を測って、

「深い睡眠が何分増えた」
「夜中に起きていた時間が何分減った」

といった客観的な変化を調べた研究ではありません。

中心となったのは、参加者自身が「前よりよく眠れたと感じたか」という睡眠の評価です。

また、研究期間も7日間でした。

そのため、この研究だけで、

「本を読めば誰でも眠りが深くなる」
「毎日読書をすれば不眠が改善する」
とまでは言えません。

それでも、約1,000人を無作為に2つのグループに分けて比較し、寝る前に本を読んだグループで「睡眠が改善した」と回答した人の割合が高かったことは、寝る前の読書と睡眠の関係を考えるうえで興味深い結果です。

読む内容によって睡眠への影響は変わる?

2022年、イタリアのパドヴァ大学とキエーティ・ペスカーラ大学の研究者たちは、寝る前の読書によって生じる感情と睡眠の関係を調べました。

研究の中心となったエンリコ・セッラ(Enrico Sella)氏は、パドヴァ大学の一般心理学部に所属する研究者です。

この研究には、同じパドヴァ大学のエリカ・ボレッラ(Erika Borella)氏や、キエーティ・ペスカーラ大学のロッコ・パルンボ(Rocco Palumbo)氏、アルベルト・ディ・ドメニコ(Alberto Di Domenico)氏も参加しています。

対象となったのは、

・64〜75歳の高齢者 60人
・18〜35歳の若年成人 60人

の合計120人です。

参加者は無作為に、

  1. 前向きな感情を生じさせる短編を読むグループ
  2. 感情的に中立な短編を読むグループ
  3. 研究用の短編は読まず、普段どおりの就寝前の過ごし方を続けるグループ

の3つに分けられました。

ここでいう「前向きな感情を生じさせる短編」と「感情的に中立な短編」は、研究者が感覚だけで分けたものではありません。

研究ではあらかじめ14本の短編を選び、別の73人に読んでもらって、それぞれの物語を読んだときにどのような感情が生じるかを評価しています。

その結果をもとに、読んだあとに前向きな気持ちになりやすい短編と、感情を大きく動かしにくい中立的な短編に分けました。

一方、3つ目のグループは、研究用に用意された短編は読まず、普段どおりの就寝前の過ごし方を続けました。

つまり、この研究は単純に「寝る前に本を読む人」と「読まない人」を比べた研究ではありません。

寝る前に読む内容によって生じる感情の違いが、睡眠にどのように関係するのかを調べた研究です。

その結果、高齢者では、前向きな短編を読んだグループと中立的な短編を読んだグループのどちらも、普段どおり過ごしたグループより、眠りにつくまでの時間が短くなりました。

また、若年成人と高齢者の両方で、前向きな短編を読んだグループは、中立的な短編を読んだグループよりも、主観的な睡眠の質が良くなりました。

この結果から、寝る前の読書では、単に「読むか、読まないか」だけでなく、読んだ内容によってどのような感情が生じるかも、睡眠に関係する可能性があると考えられます。

ただし、この研究は、小説・エッセイ・ミステリー・ホラーといったジャンルそのものを比較したものではありません。

そのため、「寝る前にはこのジャンルがいい」とまでは言えません。

分かっているのは、読書によって生じる感情の違いが、睡眠に関係する可能性があるというところまでです。

なぜ寝る前の読書が睡眠に関係するのか

本を読むと、

仕事のことを考え続ける。

明日の予定が気になる。

嫌な出来事を何度も思い返す。

といった状態から、一度意識を本の内容へ向けることができます。

また、

本を読む。
↓
眠くなる。
↓
本を閉じる。
↓
眠る。

という流れが毎日の習慣になることで、就寝前の気持ちの切り替えにつながる可能性もあります。

ただし、

「読書をすると副交感神経が優位になるから眠れる」

「読書によってコルチゾールが下がるから眠れる」

といった仕組みまで、先ほど紹介した研究で直接確認されたわけではありません。

寝る前の読書で睡眠が良くなったと感じる人が増えたことは確認されていますが、「なぜそうなるのか」については、まだ分かっていない部分があります。

寝る前は何分くらい本を読めばいい?

「寝る前は10分読むといい」

「20分くらいがいい」

「30分読むと眠りやすくなる」

といった話を見かけることがあります。

しかし、何分読むのが最も睡眠に良いのかは、現在のところ分かっていません。

2021年に、アイルランドの国立アイルランド大学ゴールウェイ校の看護・助産学部や、ヘルス・リサーチ・ボード臨床試験方法論研究ネットワークなどの研究者たちが991人を対象に行った研究では、参加者に寝る前に15〜30分ほど本を読むよう指示していました。

ただし、

10分
15分
30分
60分

を比較して、「どの時間が一番よかったか」を調べたわけではありません。

そのため、

「寝る前の読書は15〜30分が最適」

と考えることはできません。

時間そのものよりも、気をつけたいことがあります。

それは、読書のために寝る時間を遅らせないことです。

本に夢中になって「あと少しだけ」と読み続け、睡眠時間そのものを削ってしまっては意味がありません。

電子書籍の場合は別の問題もある

ここまで扱ってきたのは、主に紙の本を読む場合です。

Kindle Paperwhite、スマホ、タブレットなどで読む場合には、読書そのものとは別に、画面から目に入る光についても考える必要があります。

また、Kindle Paperwhiteなどで使われているE Inkと、スマホやタブレットの画面では、光の出方も同じではありません。

電子書籍の場合については、

→ 寝る前の電子書籍は睡眠に影響する?

で扱います。

まとめ:寝る前の読書は、睡眠を邪魔しない範囲で楽しむ

寝る前の読書について、現在の研究からは、睡眠に良い影響を与える可能性があることが分かっています。

2021年に、アイルランドの国立アイルランド大学ゴールウェイ校の看護・助産学部や、ヘルス・リサーチ・ボード臨床試験方法論研究ネットワークなどの研究者たちが991人を対象に行った研究では、寝る前に本を読んだグループの方が、読まなかったグループよりも「睡眠が改善した」と回答した人の割合が高くなりました。

また、2022年に、イタリアのパドヴァ大学とキエーティ・ペスカーラ大学の研究者たちが120人を対象に行った研究では、寝る前に読む内容によって生じる感情の違いも、睡眠に関係する可能性が示されました。

ただし、どちらの研究も「本を読めば誰でも深く眠れる」「睡眠時間が必ず長くなる」と証明したものではありません。

また、寝る前に何分読むのが最も良いのかも、現在のところ分かっていません。

2021年の研究では15〜30分ほど読むよう指示されていましたが、この時間が最適だと確認されたわけではありません。

寝る前に本を読むなら、時間を細かく決めることよりも、読書のために寝る時間を遅らせないことの方が大切です。

眠くなったら本を閉じる。

そして、睡眠時間を削らない範囲で楽しむ。

現在の研究から見ると、寝る前の読書とは、そのくらいの付き合い方がよさそうです。

参考URL

  • アイルランド・国立アイルランド大学ゴールウェイ校:寝床での読書と睡眠を991人で比較したランダム化比較試験
    Does reading a book in bed make a difference to sleep in comparison to not reading a book in bed? The People’s Trial—an online, pragmatic, randomised trial
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34996514/
  • イタリア・パドヴァ大学/キエーティ・ペスカーラ大学:就寝前に読む短編によって生じる感情と睡眠の関係を120人で調べた研究
    Positive emotions before bedtime: Effects on subjective sleep quality in young and older adults
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36300485/
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