漸進的筋弛緩法(ぜんしんてききんしかんほう)とは?
筋肉にいったん力を入れ、そのあと力を抜いて体をゆるめていく方法を「漸進的筋弛緩法(ぜんしんてききんしかんほう)」といいます。
少し難しい名前ですが、言葉を分けると意味はシンプルです。
「漸進的(ぜんしんてき)」とは、少しずつ順番に進めていくこと。
「筋弛緩(きんしかん)」とは、筋肉の力をゆるめることです。
つまり漸進的筋弛緩法とは、手、腕、肩、顔、脚など、体の部位ごとに順番に筋肉へ力を入れ、そのあと力を抜きながら、少しずつ全身の緊張をゆるめていく方法です。
この方法は、1930年代に米国の医師・生理学者エドモンド・ジェイコブソン博士によって広められました。
特徴は、最初から「力を抜こう」とするのではなく、あえて一度筋肉に力を入れることです。
普段は肩や腕などに力が入っていても、自分ではその緊張に気づいていないことがあります。そこで、いったん意識的に筋肉に力を入れ、そのあと力を抜きます。
すると、「力が入っている状態」と「力が抜けた状態」の違いを感じ取りやすくなります。
現在では、ストレスへの対処だけでなく、不眠症の認知行動療法(CBT-I)などでも使われています。
CBT-Iとは、眠れないときの考え方や行動、睡眠習慣を見直して、眠りやすい状態をつくっていく治療法です。薬だけに頼るのではなく、不眠を長引かせている習慣や考え方を少しずつ整えていき、その方法の一つとしてリラクゼーション法が使われることがあります。
では、この漸進的筋弛緩法を寝る前に行うことで、実際に睡眠はどのように変わるのでしょうか。
もちろんです。では、2026年の研究部分を、専門用語を減らして最初から書き直します。
2026年、14件・957人の研究をまとめて調べた研究
2026年、マレーシア・プトラ大学などの研究チームは、漸進的筋弛緩法が睡眠の質にどのような影響を与えるのかについて、それまでに行われた研究をまとめて分析しました。
対象になったのは、漸進的筋弛緩法を行うグループと、行わないグループなどを比較した14件の研究です。
参加者は合計957人でした。
研究の対象者には、がん患者、人工透析を受けている人、関節リウマチやてんかんのある人、慢性閉塞性肺疾患や睡眠時無呼吸症候群のある人など、さまざまな背景を持つ成人が含まれていました。
睡眠の評価には、主に「ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)」が使われていました。
これは、寝つき、睡眠時間、夜中の目覚め、本人が感じる睡眠の質などについて質問し、睡眠の状態を点数で評価する方法です。
14件の研究をまとめて分析したところ、漸進的筋弛緩法を行った人たちは、行わなかった人たちよりも、全体として睡眠の質が良くなっていました。
ただ、睡眠がどの程度良くなったかは、対象者によって違いがみられました。
年齢別に見ると、55歳未満を対象とした研究では睡眠の質の改善がみられました。一方、55歳以上を対象とした研究だけをまとめた場合には、はっきりした改善は確認されませんでした。
全体として見ると、この研究では、漸進的筋弛緩法を行った人たちの方が、行わなかった人たちよりも睡眠の質が良くなっていました。
2022年、更年期移行期の女性108人を3つのグループに分けた研究
2022年、トルコのガジ大学のスドゥカ・ペリト・アクス氏とアイテン・シェントゥルク・エレネル氏は、更年期移行期の女性を対象に、漸進的筋弛緩法が不眠症状などに与える影響を調べました。
参加したのは108人です。
研究では、参加者を無作為に36人ずつ、3つのグループに分けました。
1つ目は、健康についての指導と漸進的筋弛緩法の両方を行うグループ。
2つ目は、漸進的筋弛緩法だけを行うグループ。
3つ目は、これらの介入を行わない対照グループです。
最終的には90人が研究を最後まで完了しました。
この研究では、睡眠だけを調べたわけではありません。
更年期にみられるほてりや寝汗なども記録し、不眠症状については「ウィメンズ・ヘルス・イニシアチブ不眠評価スケール」という質問票を使って調べました。
この質問票では、寝つきにくさや夜中の目覚めなど、不眠に関係する症状を点数で評価します。
結果を見ると、漸進的筋弛緩法を行った2つのグループでは、対照グループよりも不眠症状の点数が改善していました。
さらに、健康教育と漸進的筋弛緩法の両方を行ったグループでは、漸進的筋弛緩法だけを行ったグループより、各測定項目で改善幅が大きくなっていました。
ほてりや寝汗についても、介入を行ったグループの方が改善しています。
この研究から、漸進的筋弛緩法を生活の中に取り入れることが、更年期移行期の女性の不眠症状をやわらげる方法の一つになることが示されました。
2024年、63人の女性が8週間続けた研究
2024年には、トルコのシャパネ地区州立病院とキュタヒヤ保健科学大学の研究者が、閉経後の女性を対象にした研究を発表しています。
研究が実際に行われたのは、2022年1月から7月です。
対象になったのは、睡眠の質が低下していた閉経後の女性63人でした。
参加者は、
漸進的筋弛緩法を行う31人と、
それまで行っていた睡眠や疲労への対処を続ける32人の対照グループに、無作為に分けられました。
漸進的筋弛緩法を行うグループは、この方法を毎日、8週間続けました。
実践するときには、研究者が作成した説明資料と、漸進的筋弛緩法の手順を音声で案内するトルコ心理学会のCDが使われました。
研究チームは、漸進的筋弛緩法を始める前と、始めてから4週間後、8週間後の3回、睡眠の状態を調べました。
睡眠の質は、先ほども登場したピッツバーグ睡眠質問票を使って評価されました。
その結果、漸進的筋弛緩法を始めてから8週間後には、対照グループと比べて睡眠の質がより大きく改善していました。
さらに、この研究では「Piper Fatigue Scale(パイパー・ファティーグ・スケール)」という別の質問票を使って、疲労の程度も調べています。
これは、疲れの強さや、疲労が日常生活にどのくらい影響しているかなどを質問して評価する方法です。
こちらについても、8週間後には漸進的筋弛緩法を行ったグループで改善がみられました。
ただし、この研究は参加者が63人と大規模ではなく、全員が閉経後の女性です。
そのため、男性や若い世代にも同じ結果が当てはまるかは分かりません。
寝る前にどうやればいい?
漸進的筋弛緩法にはいくつかのやり方があり、筋肉に力を入れる秒数や、手・腕・肩・脚などをどの順番で行うかには少し違いがあります。
ここでは、自宅で試しやすい代表的なやり方を紹介します。
基本は、「数秒間、筋肉に力を入れる」「そのあと力を抜く」「力が抜けた感覚をしばらく味わう」という流れです。
ここでは、手から始めて、腕、肩、顔、脚・足へと順番に進めます。
- 手
両手を軽く握り、5秒ほど力を入れます。そのあと手を開き、10〜15秒ほど力が抜けていく感覚を味わいます。 - 腕
肘を曲げ、腕に力を入れます。5秒ほど保ったら力を抜き、腕がゆるんでいく感覚を10〜15秒ほど感じます。 - 肩
両肩を耳に近づけるように持ち上げ、5秒ほど力を入れます。そのあと、肩をすとんと下ろして力を抜きます。 - 顔
目や口の周りに軽く力を入れ、5秒ほど保ちます。そのあと顔全体の力を抜き、表情がゆるんでいく感覚を感じます。 - 脚・足
太ももやふくらはぎに力を入れ、つま先を軽く反らせます。5秒ほど力を入れたあと、一気に力を抜きます。
すべて終わったら、そのまま全身の力が抜けた感覚をしばらく味わいます。
筋肉を痛めるほど強く力を入れる必要はありません。「今、ここに力が入っている」と感じられる程度で十分です。
また、力を入れている間も呼吸は止めず、普段どおりに呼吸します。痛みやけががある部位は無理に行わず、その部分は飛ばして構いません。
全体で5〜10分ほどを目安に行えます。
寝る直前にやってもいい?
漸進的筋弛緩法は、特別な器具を必要としません。
椅子に座って行う方法もありますが、寝る前ならベッドや布団の上で行うこともできます。
ただし、
「5分やれば必ず眠れる」
という方法ではありません。
先ほど紹介した研究でも、数週間にわたって繰り返し実践しているものがあります。
そのため、「眠るためのスイッチ」と考えるよりも、寝る前に体に入っている余計な力をゆるめる練習と考えた方が分かりやすいでしょう。
眠れない夜ほど、
「早く寝なければ」
「まだ眠れない」
と体にも力が入りやすくなります。
そんなときに、眠ろうと頑張るのではなく、まず体の緊張を一つずつゆるめていく。
漸進的筋弛緩法は、そのために使える方法の一つです。
米国睡眠医学会でもリラクゼーション療法が推奨されている
2021年、米国睡眠医学会は、成人の慢性不眠症に対する心理療法や行動療法について診療ガイドラインを発表しました。
この中では、眠れないときの考え方や行動、睡眠習慣を見直して、眠りやすい状態をつくっていく「不眠症の認知行動療法(CBT-I)」が強く推奨されています。
一方、漸進的筋弛緩法などを含むリラクゼーション療法についても、慢性不眠症に対する単独の治療法の一つとして「条件付き」で推奨されています。
「条件付き」というのは、
「すべての人に必ずこの方法を使うべき」
という強い推奨ではなく、患者の状態や希望などを考えながら選択肢の一つとして使う、という位置づけです。
つまり、漸進的筋弛緩法は単なる民間の睡眠テクニックではなく、医療の世界でも不眠への対処法の一つとして扱われています。
ただし、慢性不眠症に対する中心的な治療はCBT-Iであり、漸進的筋弛緩法だけですべての不眠を解決するという位置づけではありません。
はい。ここはかなり整理できます。
特に、
「主観的な睡眠の質」
「研究によって結果にはばらつき」
「年齢や対象者によっても結果は同じではありません」
「必ず眠れるわけではない」
が続いていて、まとめなのに少し注意書きが多いです。
この章では、研究の細かい限界をもう繰り返さず、「何がわかったか」「どう使えばいいか」を簡潔にまとめた方がいいです。
まとめ:眠ろうと頑張るより、まず体の力をゆるめる
漸進的筋弛緩法は、筋肉にいったん力を入れ、そのあと力を抜くことで、体の緊張を少しずつゆるめていくリラクゼーション法です。
これまでの研究では、漸進的筋弛緩法を行った人で、睡眠の質や不眠症状が改善する結果が報告されています。2026年に14件・957人の研究をまとめた分析でも、全体として睡眠の質が良くなっていました。
寝る前に行う場合は、手、腕、肩、顔、脚などに順番に力を入れてから抜き、力が抜けていく感覚を確かめていきます。
大切なのは、「これをやれば絶対に眠れる」と考えることではありません。
眠れないときに無理に眠ろうとするのではなく、まず体に入っている力を少しずつゆるめていく。そのための方法の一つとして、漸進的筋弛緩法を寝る前の習慣に取り入れてみるのもよいでしょう。
また、寝る前の時間をどう過ごすかという点では、読書もよく取り上げられる習慣の一つです。
では、寝る前に本を読むことは、本当に眠りやすさにつながるのでしょうか。
参考URL
- マレーシア・プトラ大学など:漸進的筋弛緩法と成人の睡眠の質について、14件の無作為化比較試験・957人をまとめて分析した研究
The effects of progressive muscle relaxation on sleep quality in adults: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials
https://www.frontiersin.org/journals/public-health/articles/10.3389/fpubh.2026.1906525/full - トルコ・ガジ大学:更年期移行期の女性108人を3つのグループに分け、健康教育と漸進的筋弛緩法が不眠症状やほてり、寝汗に与える影響を調べた研究
Effects of health education and progressive muscle relaxation on vasomotor symptoms and insomnia in perimenopausal women: A randomized controlled trial
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35961801/ - トルコ・キュタヒヤ保健科学大学など:睡眠の質が低下している閉経後女性63人を対象に、漸進的筋弛緩法を毎日8週間行った場合の睡眠と疲労への影響を調べた研究
The effect of progressive muscle relaxation exercises on postmenopausal sleep quality and fatigue: a single-blind randomized controlled study
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39058233/ - 米国・米国睡眠医学会:成人の慢性不眠症に対する認知行動療法やリラクゼーション療法などの推奨をまとめた診療ガイドライン
Behavioral and psychological treatments for chronic insomnia disorder in adults: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33164742/
